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森に降る雨

街に降る雨は人の気持ちを曇らせ、足取りも急かしてしまう。けれど、森に降る雨は足を立ち止まらせて、うっとりとさせる力を持っている。森を歩くとき、快晴よりも雨や霧を望んでしまうのは、水に浸された森が嬉々として目に映るからだろうか。水滴を含んだ苔の潤いや雨水の伝う巨樹の表皮がただ美しい。これを写し込めるものなのかなといぶかしげにカメラを構えてみる。そうこうしているうちに雨脚は強くなり、雨粒が流れとなって樹々を辿り、苔に吸い込まれていく。地面に落ちた水が寄り集まって、苔の下の小さな沢の在り処も耳に届くようになる。やがて、無数の葉が無数の雨粒をはじく音に身体が包み込まれる。